(disc review)
(0013)
2004.08.08 out!!!
NEW 2nd mini ALBUM “海風と君のこと”
1:海風と君のこと 2:sweet days 3:YOU
4:猫背のブルー 5:ガールフレンド 6:ベッドタウン 全6曲
\1,890 (SPROUSE) LSCA-1004
taeが紡ぎ出す永遠なる青き感情は、この世に君と僕がいる限り、世代や年代を超えて響き渡る
どんなに人と繋がっていようが、結局僕らは孤独な存在なんだと言うことを改めて感じてみる。君に思いを馳せて結果的に繋がったとしても、それは決して永遠なるものではないということを改めて感じてみる。でも人は人との繋がりが成立しないと何も産み出すことは出来ないということも改めて実感する。故に僕らは人との繋がりを決して止めず、繋がった瞬間に湧き出る感情を手にするために、君と出会い、別れ、答えのない人生を日々歩き続ける。それが僕らのライフだ。そしてそんなとりとめのない平凡な日々を歩き続ける僕らに必要なもの、それがロックンロールである。孤独から離れられない自分をしかと抱き締めながらも、生を謳歌するために歩き続ける僕らの傍らで鳴り響くライフ・ミュージックだ。現実逃避の為に鳴らされる虚構のロックンロールに魂を強奪されるのはもうごめんだ。君との愛の繋がりを求め、転がり続けながら、泣き笑い叫び苦しみ続けるライフをただ歩くために必要なものとしてのロックンロール。世知辛い時代から目を逸らさずに、魂を、感情を揺さぶる音楽を鳴らし出すロックンロール。それがすべてだ。そんな僕らのライフ・ミュージック、本物のロックンロールを、なんの衒いもなく、全ての感情を剥き出しにして鳴らし出すバンドが今この時代に一つの作品を刻印した。それがtaeの2nd album「海風と君のこと」である。
ロックンロールにとって一番重要なものはビートだ。そのビートを、楽曲のボトムを支えるのが坂巻のベースと安部川のドラムだ。2人が産み出す音塊が中核となっているロックンロール・ナンバーである、M3「YOU」を聴けば、唯一無二の強靱なビートに釘付けになってしまうであろう。ヴォーカル沼倉のファルセットと小野の柔らかく鋭いギターの音色が絡み合ったこの楽曲は、所謂J-POP界隈で言われる四つ打ちという手法などとは無縁にも関わらず、思わず「ディスコ!」という言葉を声高らかに叫んでしまうダンスナンバーだ。重厚かつ軽快なこのダンスナンバーを聴けば、彼等が産み出すロックンロールが時代性を伴った本物であることが明らかになるだろう。そして小野が繰り出す変幻自在のギタープレイにも是非耳を傾けて欲しい。優しい音色の中にも刺があり、パワーコード満載の爆音の中にも刹那さと暖かさが同居している彼のギターの音像だけに耳を身体を心を委ねるだけでも様々な世界に感情をムーヴされてしまう。M1「海風と君のこと」とM6「ベッドタウン」の音像を聴き比べてもらえれば一聴瞭然。瞬間的な激しさと染み渡る刹那さの落差の中に常に潜んでいる彼ならではの感情の揺らぎが、時には奥深く、時にはあからさまに表出している。素晴らしき色彩豊かな心情音像。そんなtaeの楽曲のすべてを産み出している沼倉の歌詞、ヴォーカリゼーションはどうだろうか。1st以来彼は常にロックンロールの永久の命題でもある君と僕という関係性を、独自の世界観で歌い上げ紡ぎ出し続けているのだが、それは単なる若さ故の性急さで、青き想いへの憧憬を聴き手と慰め分かち合う音楽を創り出しているのではない。心の奥底から渾身の思いで絞り出される彼の呻き声と、哀愁の思いで解き放たれるファルセットに乗せて唄われる歌詞に刻み込まれた永遠のピュアネスさを感じ取って欲しい。そして彼が描き出す君と僕の恋愛感情は、ありふれたドラマや映画によって創り上げられたフィクションでもない。沼倉が、taeが紡ぎ出す永遠なる青き感情は、この世に君と僕がいる限り、世代や年代を超えて響き渡るものだ。“瞬間を繋ぎ留めていたいずっと でたらめなあの夜もすべて憶えていたいから”M5「ガールフレンド」、“愛に生きるしたくができたら もう一度君を迎えにいこうとおもうよ”M6「ベッドタウン」―どうだろう? 狂おしくとも愛おしくとも感じられるこの歌詞。どうだろう? 僕らは孤独という森の中で感情を持ち合わせていることを忘れてしまってはいないだろうか? そんな思いを喚起させるこの沼倉の織り成す世界観と、坂巻、安部川、小野の世界観。この異なる4つの魂が神妙さをすべて吐き出し、つばぜり合いながら巧妙に音像を鳴らし、絶妙なロックンロール・ミュージックを表現しているからこそ、tae(妙)が産み出す音楽という魔法が僕らの魂を、感情を激しく穏やかに揺さぶるのだ。
“知りすぎた先の 爛れゆく世界 覆し笑えるよ きっと”M1「海風と君のこと」
これは諦念ではない。打算でもない。夢想でもない。止まらない日々というサークルの中、終わり無き螺旋階段を昇り、僕のライフを握りしめるために、君という愛の光を求め歩き続ける。愛すべき君がここやそこやどこかにいると思えるからこそ、渾沌とした時代を歩き続ける。だから僕らは孤独を噛み締めることが出来る。ピュアな感情を失わずにいることが出来る。闇と光が拮抗したこの世界に君という愛の光を求め掴み、離し、また掴むという儚いライフを繰り返し過ごす僕らには、共に歩むべく強く優しいロックンロールが必要なのだ。それがこのtaeの2nd album「海風と君のこと」なのだ。