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中村一義 / キャノンボール
CD (MAXI SINGLE)
TOCT - 4353
1月23日発売
『愛』という言葉ほど、不確で、曖昧で、目に見えないものはないだろう。故に、誰も彼もが『愛』という言葉を定義することは出来ないだろう。だから、僕達は、『愛』という存在に怯えたり、はたまた、全肯定することが出来ないのであろう。しかし、だからといって、やみくもに『愛』という存在を真っ向から否定してしまっていいものだろうか?まったく信じられないものとして忌み嫌ってしまっていいものだろうか?僕はそう考える。 例えば「死」という言葉。または、「生」という言葉。これらの人間不変の真理だって僕達は定義することが出来ない。君の周りに広がる「世界」だってそうだ。はたまた、あなたという「自分」だってそうだ。この目で見えるもの全てが、僕らには定義することが出来ないのだ。目に見える形以外のもの全てに対して、僕らは定義付け出来ないのだ。こういってしまうと、生きていることや自分が存在していることに無意味さを感じてしまうかも知れない。実際、そうなのかもしれない。悲しいかな、僕達は無意味な存在なのかも知れない。でも、それは、僕達があらゆる対象に対して「言葉」という「知識」をもって何とか定義付けようともがき苦しんでいるからなのだと思ってしまう。『愛』を、どうにか自分の目に見える存在としてすり替えようとしているから、知識というものを利用してどうにか「言葉」という目の見えるものに摺り替えようとするからだ。それは、そうでもしなければ僕達は不安でいっぱいになってしまうからだ。
「そこで愛が待つゆえに、・・・」
この歌で、何度も繰り返されるサビのリフレイン。メロディーといい、高揚感といい、すべてが僕の心を高ぶらせ、すべてが僕の『感情』に突き刺さる。そして、『愛』という響きが、とてつもなく強烈だ。
さて、どうだろうか?この曲をあなたが聴いて『愛』についてどう思うのだろうか?やはり、「ちょっとついていけないや」と思うのだろうか?「愛なんて言われても、俺には解らないし、そのような、目に見えないものに向かって行ったところでどうなるのか?」と思うのだろうか?きっと誰もがそう思うのかも知れないし、今までの中村一義物語に対して盲目的にシンパシーを抱いている人達にとってみれば、あまりにもシンプルすぎて、簡潔すぎて、曖昧すぎて、物足りないと思うのかも知れない。でもさ、でもさ、僕は断固として言いたいんだ。だってさ、「音楽」だって、結局は形の無いものなんだよ?ただの空気の振動なんだよ?み〜んな見えないものなんだよ?なのに、なんで、みんな、形あるものに進んで行くの?見えるものだけが全てじゃないんだよ?だからこそ、僕達は「音楽」に身をゆだねることが出来るんだよ!見えないほうに、見えないほうに、進んで行くんだよ!!そして、その結果、大事なのは、見えるものや、見えないものを通して沸き上がってくる自分自身の『感情』なんだよ!!
そう、僕は今までいろんなものを目にしてきた。いろんな馴れ合いや、いろんな生死や、いろんんな別れや、いろんな異性や、いろんなテレビや、いろんなニュースや、いろんな音楽を目の当たりにしてきた。でも、その、様々な場面で見てきたものの詳細なる記憶はとうにない。目の当たりにしてきた景色なんて、時が経つにつれてかすれて行くものだ。でも、でも、その時に、目にしたものに対して沸き上がってきた僕の『感情』は記憶に焼き付いている。そう、僕は、その時に焼きつけられた『感情』が一番大事なんだと断言する!!
何度も何度も言うようだが、今まで僕らは、形あるもの&目に見えるものに依存し過ぎていた。それは、そのほうが安心だからだ。確信が持てるからだ。でも、その確信を得ることによって、どれだけの人が満足のいくライフを送ることが出来ているのだろうか?お金を持っている人がすごく幸せなのかっていったらそうでもないでしょ?ねぇ?そういう疑問に今こそ異論を叩き付けてもいいと思うのだ。
『愛』。果てしなく形の無いもの。そこに、中村一義は答えを求めようとしている。でも、人生に答えなんてものは無いはずだ。だって、すべてに答えなんかあるはずが無いのだから。でも、中村一義は、改めてそこへ突き進む決心をした。「死ぬように生きていたくはない」という決意とともに。穢れの先で・・・。
この、中村一義の『愛』に対するとてつもなく無防備で無鉄砲な表現は、自分自身の人生を偏屈に捕らえている人から見れば、中村一義と言う人間に対して、「無意味に人を巧みに誘い込む扇動者だ」というレッテルを貼ろうとしてしまうのかもしれない。でも、彼は行く。そして、僕も行く。立ち止まる。そして、往く。そう、僕の人生のすべてが不確かであるということを明らかに感じ取っているからこそ、僕はいく。僕の魂の中から沸き起こる『感情』を信じて、最大限の心震わす響き言葉である『愛』の存在を信じて僕は往くんだ。そう、この世界にあるすべての不確かなものの中で一番光り輝く『愛』の存在を信じて、僕の魂の中から沸き起こる光り輝く『感情』を信じて、僕は行くのだ。
これでいいのだ。絶対!!
そのほうがうまく行くんだよ。絶対!!
だって、愛は愛だろ?